「へ?そうなの!?何でそれを早く言わないのよ!」
突然怒鳴りだした静香がコーヒーを勢いよくテーブルに置く。
「それってバイトってこと?」
「さぁ?知らね。はっきりとは分からないけど、そういうふうにも読みとれるんじゃねーか?」
もしそうなら願ったり、叶ったり。
今まで何もなかった彼女とのつながりがやっとできたようで、内心気持ちが弾まないはずがない。
「そうと決まればさっさと行くわよ!」
「は?」
急に立ち上がった静香にグイグイと背中を押されたのは、正直俺の誤算だった。
ビックリする俺を余所に、驚くほど楽しそうな笑みを浮かべる静香を本気で厄介だと思ったことはない。
……けど、内心そのおせっかいに乗ってみたいとも思った。
嫌な予感がする半面、嬉しさが込見上げた俺は、結局そんな静香に負けて「シャルノ」というお店の自動ドアを複雑な気持ちで踏み入れていた。