「まぁ、そう言うなって」
そう言ってなだめるように作ったばかりのコーヒーを手渡した。
「つーかまだ諦めるって言ってるわけでもないだろ?」
それに、俺だってまだ本気であの男が恋人だって認めた覚えはない。
「同じことよ」
「それがな。あの後少ししてその男と別れて、どこか飲食店に一人で入って行くところを見たんだよ」
それは願ってもないものだった。
あれから茫然と見送っている俺の目にうつったもの。
それはいつの間にか男と別れ、「シャルノ」と書かれたどこにでもありそうなカフェに入って行く彼女の姿だった。
しかもなぜか裏口から…
少しダルそうに入って行く姿がとても印象的で、それはしっかりとこの目に焼き付いてくれていた。