俺は一度見た患者は忘れない。


ましてや特別な彼女のことを間違えるわけがなかった。




「………」



急激に体温が冷えていく感じがした。


心が今まで感じたことのないような締めつけを始めていく。



うわ。失恋?


再び再開した日に、見事に撃沈?


正直今まで恋人の可能性を考えていなかったこともないが、あえてそのことを頭に入れないようにしてきたのも正直な俺の思い。


都合のいい考えであるのは分かってはいたが、どうしても俺の心がそれを頑なに認めようとはしなかった。



どうすんだ。これ。


諦めんのか?


――でも、正直まだ恋人と決まったわけでもない。


そんな思いが脳裏にぐるぐると回り、結局俺はその場から立ち止まったまま、遠ざかっていく彼女の姿を見つめることしかできなかった。