「なぁ、東城って

何で陸上始めたの?

親の影響とか?」

「そんなこと聞いてどーすんの?」

「いや、ちょっと気になって…」

「………小6のとき

ある人の走ってるのをみて

『俺もあんなふうに走れたらなぁ』

って思って始めた。」

「へぇ~。ある人って?」

「俺より3つ上の人。

凄くかっこよかった。」

そう言ったときの東城拓巳の顔は

キラキラ輝いていた。

でも、

「その人、まだ陸上してるの?」

あたしがそう聞くと

東城拓巳の顔は

いつもの無表情に変わった。

「…もう、いいだろ。」

東城拓巳はそう言って立ち上がり

スタスタと奥に歩いて行った。

何か悪いことを聞いたのかな?

それから、

東城拓巳はその話しを

二度と口にしなかった。