夜に雨が降ると、史上最悪に憂鬱な気分になってしまう。


じめじめして、纏わりつく気持ち悪い空気感と、そして苦々しいばかりの記憶の数々。


何も考えず、何もかもを捨てて、胎児のように丸まれるのはいつも、レイコさんちのベッドの中だけ。



「どうりで寝心地が悪いと思ったら。」


銀二だったのね、といつもの嫌味。


けれども俺は笑いながら、ふかふかが好きやねん、と返した。


素っ気ないけど、そういうのが心地良い。






レイコさんちは知っていた。


豪華マンションで、広すぎて驚くくらいやけど、何もなくて、そして寒々しい。


まるでレイコさんの瞳そのまま。


彼女は組の抱える風俗店の、不動のナンバーワンやってん。


ある時、理由は忘れたけどひどく落ち込んでた時があって、こんなんじゃ理乃が待つあの家には帰られへんって思った。


清人はたまたまおらんくて、でも嶋さんにも国光さんにも言えんような悩みやってんけど。


迷った末に、俺は彼女に電話を掛けた。



「今からレイコさんち行って良い?」