中一の時、林間学校があってんけど、一泊二日のお泊りみたいなもんやな。


何も知らんと、ホンマ楽しかったのは覚えてるわ。


帰り道は突然の豪雨でな、それでも早くオカンに会いたいと思って、勇み足で家まで帰ったんや。


で、思い出携えて意気揚々と玄関のドア開けた瞬間。


人間、驚くと言葉も出んくなんねんで?





これって、何?





人形みたいやった。


首を紐で縛った宙ぶらりんの人形が、天井からぶら下がってんねん。


人って首吊るとな、穴っちゅー穴から体液出てくるんやで。


半開きの口からは舌がだらんと垂れて、よだれの痕が伝ってる。


涙とか鼻水とか、とにかくだだ漏れの人形が、俺の目の前にあってんな。





山下のヤツ、これって笑えへんで?





クラスメートの山下は、何かと俺にちょっかい出してくるアホで。


きっとそいつの悪ふざけやと思った。


そう思いたかってん。




オカンやない。
オカンやない。
オカンやない。


これは人形やねん。


出来の悪い夢やんな?




リュックが地面に落ちて、ぼすっと音がした。


俺の人生はその時、オカンにあげるはずやった木彫りの人形と一緒に、壊れてしもうてん。