「清人は花穂ちゃんのこと、好きになれんかったんやろ?
しゃーないやん。」


しゃーないねん、これは。


多分俺は、自分自身に対してもそう言い聞かせたかったんやと思う。



「花穂とは一緒に育ったんだよ!
女って目では見れねぇし、そんなこと今更言うなよ!」


言い訳めいてたけど、それでも清人は苦しそうやった。


俺はどっちもの気持ち知ってたから、わかってるよ、わかってるよ、ってなだめて。


気持ちの問題なんて、俺にも、誰にも、どうすることも出来んやん。



「花穂ちゃんもな、ちゃんとそれわかっててん。
けど、きっと苦しかってん。」


わかってあげてな?


清人は何も言わず、泣きそうな顔で窓の外を見つめた。


俺の大嫌いな雨が降る、真夜中やったわ。



「…陸は何でも知ってんだな。」


「お前は周りも見ずに駆け抜けてきたからやん。
背負い込みすぎやねん。」


「…だから俺、花穂のこと傷つけるようなことしてんだよな。」


自嘲気味な、そんな台詞。


やっぱり清人は子供みたいで、自分の方が傷ついるような顔だったから。



「あんな、キヨ。
これで終わりちゃうし、これから花穂ちゃんのことちゃんと見ればえぇやん?」


花穂ちゃんは、一歩を踏み出してん。


やからこれからちょっとずつ、清人の考えも変わってくれるかな、って思ってたんや。


未来、信じとってん。