何でそこで機嫌が悪くなるのかわからへんけど。



「なら、余計に一緒に暮らせば良いやんか。」


「いや、俺ら今、生活全然逆だから。」


「…逆、って?」


「レナさ、今またキャバなんだよね。」


きょとんとする俺に、清人は順を追うように説明してくれる。


レナちゃんは、あんな辞め方をしたこともあり、後悔する気持ちもあったらしい。


そんな時に、蛇顔のアイズの店長だった男――石垣さんから電話をもらった。


新しい店を任されたんだ、ぜひ来てほしい、と。



「レナ、最初断ったんだよ。
んでも、迷ってるみたいだったし、俺が背中押してやったの。」


岡ちゃん、というお客が、半端はダメだと言っていた。


辞めた時に何も残らなければ意味がない、と昔言われたのだとか。



「なら、余計やるべきじゃん、って。
で、考えてみて、やっぱやりたいなぁ、って気持ちが勝ったんだと思うけど。」


今度はちゃんと、等身大の自分で勝負をしてみたい、と言っていたらしい。


ほとんどの客を切り、新店舗で真面目にイチから出直して、そしてナンバーワンを目指すのだとか。



「辛い時とか、俺居るし。
それでダメだったり、満足して辞めるとかでも、アイツが自分なりに答え出したらさ。」


うち来りゃ良いじゃん、と清人は言う。



「レナんち狭いしさ。
俺んとこならアイツ一匹転がり込んで来ても問題ないし?」


だからそれまで待ってるつもり。


そう付け加え、彼は煙草を咥えてしまう。



「…そんなんで良いん?」