共鳴り

「じゃあ風俗でも行くか?」


「…風俗って、何?」


「金貰って男を悦ばせる仕事だ。」


ふうん、と思った。


過去に植え付けられた痛みは、この空虚な時間の中に消えた。


だから別に、それで良いと思ったのだ。


空っぽになってしまった自分の中には何も入らないし、体というのは魂を入れている箱のようなもの。



「それをしたら、あたしにお金が貰えるの?」


「あぁ、お前が稼いだ自分だけの金だ。」


「じゃあ、それ。」


例えばそれは、店員に勧められたから買う、というくらいのものだったのかもしれない。


紹介してくれたのは、国光という得体の知れない男と、そして店。


仕事の内容は国光という男や、店長だと名乗る男が手取り足取り教えてくれた。


風俗店というのは、個室にこもって一日を終えれば良くて、だから彼女は店にどんな人間が働いているのか知らない。


一応は待機室と呼ばれるものもあるが、別に顔は出さなかった。


客との会話のために新聞は読むようになったものの、そこに書いていることはやはり、どこか異国でのことのように思えた。


本番を求められれば応じるし、そこに何も感じない。



「毎日は確かに変化したのかもしれない。
でも、彼女の心はもうずっと、何の変化もないままだった。」


自分は出来損ないのガラクタだと思った。


神様が作った失敗作で、だからこんな風なのだろう、と。


客が笑ってる理由もわからなければ、客の悲しそうな理由もわからない。


外の世界は彼女にとって嫌いなもの、というか苦手なもので溢れていることに気付いたのだ。