「何かあったん?
つか、ヤバいことになってへん?」


『アンタねぇ、心配しすぎなのよ。
用事がある、ってだけの意味でしょ?』


だからって、レイコさんが家に帰らないなんてこと、今までなかったはずや。


彼女は軽く行ってるが、俺は考えを巡らせた。



『銀二は自分の家に帰ったら?』


言い掛けた言葉は、そんな台詞によって飲み込まざるをえなくなる。


理乃のことを忘れてたわけやないけど、思い出したくもなかった。


だって俺、どのみち合わせる顔がないんやし。



「…いつ帰ってくるん?」


『わかんないわよ、子供みたいなこと言わないで。』


「…ちょっ…!」


だけどもじゃあね、とすぐに通話は終了してしまう。


携帯片手に俺は、またうな垂れた。


取り出した煙草に火を付け、これからのことを考える。


確かに俺らはもう、組には何の関係もないけど、片付けなきゃいけないことだってあるのは事実。


それやし、“もう関係ない”で終わらせるほど、俺は不義理な男じゃないつもりや。


レイコさんに聞いて欲しいことは山ほどあったけど、しょうがなしに俺は、立ち上がり、広すぎるベッドへと倒れ込んだ。


まぁ、何をするにも寝てからやろう。


ぬくもりがないのが、少しばかり寂しいと感じてしまう。