共鳴り

「おい、ギン!」


突然に俺に向けられた顔。


驚いたように視線を戻すと、彼は口角を上げる。



「お前がコイツ殴れよ。」


「なら死んだ方がマシや。」


言うと思ったよ、と言い、嶋さんは再び清人へと視線を落とす。



「おい、ギンは裏切るってことだそうだ。
てめぇが始末つけたら今回のことは無罪放免、ってことでどうだ?」


つまりは助かるのはどちらかだけ、ってことやろう。


それさえこの人にとっては、ゲームの延長や。



「俺は死体見るまでは納得しねぇからな。
間違っても殺したっつって逃がすようなことするんじゃねぇぞ?」


清人はその瞬間、苦々しい顔をする。


どこまでも考えは読まれている、ってことやろうけど。


俺らが殺し合うなんて、そんなん出来るわけないやんけ。



「ジルくーん。
なら俺ら、お手々繋いで心中するしかないみたいやなぁ?」


言った瞬間、嶋さんの拳が飛んできた。


よける暇さえなく、俺は体を壁に打ち付け、一瞬呼吸すら出来なくなる。



「アンタも馬鹿のひとつ覚えみたいに、殴る、蹴るやなぁ?」


「…何だと?」


「そういうの、単細胞、って言うらしいでぇ?」


瞬間、また殴られた。


そこからの記憶は曖昧やけど、清人が止めに入ったような気もするし、そうじゃないような気もする。


意識の端で、理乃の顔が脳裏をよぎった気がした。