共鳴り

多分、そう言われるのはわかっていた。


諦めるように肩をすくめて見せた俺に向け、彼女はまだ長い煙草の最後の煙を吐き出しながら、それを消す。



「まぁ、今日だけは許してあげる。」


そう言って、彼女は立ち上がった。


鏡の前に立つと、軽く髪の毛を直し、ピアスをつける。



「…どっか行くん?」


「だって眠れなくなっちゃったんだもの。」


「俺、冷たいベッドで寝なあかんの?」


「子供みたいなこと言わないでよ、勝手な子ね。
アンタふかふかが好きって言ってたんだから良いじゃない。」


「ケチー。」


やっぱり口を尖らせた俺に向け、レイコさんは勝手ね、馬鹿ね、と繰り返す。


そして思いついたようにこちらに顔を向けた。



「どうせ銀二も寝ないんでしょ?
だったらついでだし、ちょっと送ってくれない?」


「…どこまで?」


「事務所まで。」


「って、組の?」


「それ以外のどこがあるの?」


「こんな時間に何しに行くん?」


「それはアンタには関係ないわ。」


事もなさげに言いながら、彼女はさっさと身支度を終わらせた。


俺は長くため息を吐き出しながら、鍵を持ち上げた。