電車がやってきた。

電灯は消えており中は暗い。

すると、不思議なことが起こった。

僕が握っているレジスターが、まるで来た電車に反応したかのように輝いている。

真っ暗だった車内は無数の電球が点き、ぱあっと明るくなった。

車窓から漏れる光は暗かったホームをも明るく照らす。

僕の足もとには植木鉢が置いてあることに気がついた。

ちいさな植物が寒そうにしている。なんだか連れて行って欲しそうに見え

たので、この植木鉢を友だちのお見舞いに持っていってあげることにした。

電車だけが明るく、戦後間もない疲弊しきった街を照らしながら進んで行く。