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さて、ＢＲを使用したユキは戸惑っていた。

割れた空間は元に戻っている。

「ずいぶんと長いＢＲ旅行をしたと思っていたんだけど、さっきと同じ場所にいるような気がするな。」

ＢＲを発動させる前と同様、長門方面の国道は続いており、それを取り囲むようにして田畑が連なっている。

そして右手には青々とした日本海が広がったままだ。

数十センチだけ進んだのだろうか、それともさっきの景色の分裂は錯覚だったのだろうか。

「どっちでも良いか、こうなったら走って帰ろう」

彼女がそのように決心して空を見上げたとき、東の空から物体が近づいてくる。

正確には、消えたと思ったらさっきよりも近くに現れ、また消えたと思ったら、さっきよりも更に近くに現れるといった具合だ。

それは1人の男性だということに気がついた。

ユキはピンときた。

「彼はＢＡＬを断続的に使用して、少しずつ近づいているんだわ。」

昔、エスパーの少女を題材にしたアニメが放映されていたが、小刻みにテレポートをする様子はそれに似ていた。

ユキは怒りがこみ上げてきた。

「このシステム資源が不足した世の中だというのに、なんという無駄遣い。」

テレポート男は、どんどん近くまでやってきて、ユキの隣まできたところでテレポートの使用をやめた。

そして言った。

「リソースタウン・ハギへようこそいらっしゃいました。」

「システム資源の無駄遣いはやめなさい！」

ユキは彼が言い終わるよりも前に叫んだ。

テレポート男は、一瞬驚いた顔をしたが、すぐにすました顔に戻った。

「ああ、まだ変化に気づいてないんですね。

あなたがさっきまでいた世界とはまるで異なるところに来ているんですよ。

こちらに来る前にあなたはＢＲを使用して、見えている世界がめちゃめちゃに分裂しませんでしたか？」