ここで、何故海隊が海岸を走り続けているのかを説明しなくてはならない。

海隊は、結成されてからの2ヶ月間は海でシステム資源を探していた。

潜って海底を探索する者や、地引網を使ってみたり、釣竿を海に垂らす者、ボートで沖合いに出てトラップを仕掛ける者などであった。

新鮮な魚介類はたくさん取れたが、システム資源はひとつも取れなかった。アリノズは日に日に積み重なるプレッシャーにより疲れた表情になっていったが、他の部員はそれなりに海のレジャーを楽しんでいるようだった。

中には本格的に天然のコンブを取る者や、カマスやブリを釣り上げる者などもおり、彼らは市場で売って家計の足しにしていた。

コンブ取り名人はもはや銀行でもらう給与よりも、コンブを売って稼ぐ金の方が大きくなっており、そろそろ脱サラをしようかと悩んでいるところだった。

海産物を取りながらシステム資源を探すのが楽しい彼らは、自分たちのことを「チームうずしお(uzshow)」といつしか呼ぶようになっていた。

 しかし、当然進捗管理はされているため、部長はアリノズに成果物を提出するように求めた。

アリノズは、ただ何もありませんと言って怒られるのは何としても避けたかったので部長から提出を求められたその日、全員を集めて言い放った。

「ここにシステム資源取得帳があります。明日は部長にこの2ヶ月間の成果物を提出しなくてはなりません。海で取れたものを明日センターに持ってきてください。私は図鑑を見ながら帳簿に転記しますので。」


翌朝、アリノズは食堂の机を全てくっつけて、海で取れた成果物を並べさせた。

そして緊張した面持ちで、部長・室長以下掘削グループのメンバーを呼んだ。

食堂は磯の香りに包まれている。

部長は廊下を歩きながら、笑顔でやってくる。

自分で作詞作曲したシステム音頭「トラックDEシリンダー」の鼻歌まで歌っている。

「ほぉ~、食堂の机を全て付けるとは、大掛かりだな。たいそう沢山のシステム資源を取得したのだろう、どれどれちょいと拝見してみるか。それにしても磯くさい。」

部長はまずそのニオイに顔をしかめ、次に明らかにシステム資源ではないものが並べられているのを見るや、激昂した。