突如登場した大男に部員が釘付けになった。

「兄ちゃん」

油川だけが目を丸くした。


「兄ちゃんは、一体何をしにきたんだい。」

「お前を逮捕すると言った。最近毎晩銘湯寮周辺で不審者が叫んで町を練り歩いているという通報が入り、俺はパトロールをしていた。するとお前だった。目を疑ったが、半狂乱で叫んでいるのは俺の弟だった。はたから見ると完全に現実と夢の見境がついていない状況に見えた。絶対にないと信じ今日の昼お前の部屋を捜査したが、プランターで育てている大麻が出てきた。大麻取締法違反で逮捕する。」

兄はぷるぷるとでかい身体を揺らしながら言った。

「ああ、あれは大麻を栽培していたのか。」

それを聞いたイナックスは油川の一人部屋を思い出していた。

「まさかそんなにもストレスが溜まっていたとは。」

一同は兄弟の会話が終わると、黙りこんでしまった。

そんな中、その沈黙を破る部員がいた。

言ってはいけないと分かっていながら、ついつい叫んでしまったのだろう。

「露鵬!当部の露鵬の誕生だ!」

「いや若麒麟かもしれないぞ」

露鵬も若麒麟も大麻絡みで引退に追い込まれた時の人(力士)であった。