ビルの入口を入ると薄暗い通路を通り、一番奥のエレベーターホールに向かった。

三階につくと狭く短い廊下。等間隔に三つの扉が並んでいる。

その真ん中の扉の脇の机に無愛想な中年女が退屈そうに、文庫のページを操っているのが見えた。

こちらに気がつくと、無言でドアを開き、室内に入るように促された。

有無を言わせぬその動作に逆らう事もできずに、素直に従った。

室内には、パイプイスがギッシリと並べられていたが、ほとんどが空席であった。

数少ない聴衆に向かい熱心に語りかける男。