どれくらい時間が過ぎたのだろう

誰かが家のチャイムを鳴らした音で我に返った

モニターフォンを確認すると宅配事業者らしき風体の男だ

「はい」

無愛想な声を投げつけるようにかけると、男は耳障りな声を返してきた


「山田さんですかー。お届け物でーす」


山田は隣人だっつーの

ん、まあいいか
サインだけして荷物は頂いておくか

どうせばれやしない


「はーい」
と上機嫌な声で玄関に向かい、ドアを開けた

若々しいあんちゃんだ

ありがとよ

荷物に目を向けると大層大きなダンボール

これは実家からの仕送りかもな

隣人の顔は覚えてないが若かった気がする

多分、学生だろう


しめしめ、サインサイン

「あれ?すみませんー」

んんん

「鴻池さんですよねー?」

俺の名字だ

「ああ」

「すいませーん、間違えてましたね、失礼しました」

がっかりだ
せっかく悪事に手を染めてやるつもりだったのに

あんちゃんが急ぎ足で隣人宅に向かうを見つめながら、俺は惨めな気持ちになった