「お待たせ〜」
気まずい空気が流れる中で、戻って来た貴史の声が耳障りなくらい響く。
「早く帰ろう!!今すぐ帰ろう!!」
そう言って目も合わせず、俺の前を通り過ぎて行く空…
『そ…空!!』
ヒールのカツカツって音が止まり、振り返らんと返事をしてくる
「なに?」
『帰ったら話しよう!!』
「なんの?」
『なんのって…。』
良く考えたら…何の話をするんや…?
「今更…何の話すんのよ?話す事なんてないでしょう?クスクス」
その…笑い方…。
俺にまで、そんな態度取るんか…。
「空ちゃん!!何してんねん!!」
貴史が声を上げ、空の顔を触ろうとした瞬間…
バチン!!!!
乾いた空気に、貴史の手を弾く音が響いた…
「あたしに、触らないで」
それだけ言うと、一瞬こっちを向いたけど
スタスタと歩いて行ってもうた…。
冷たい目で俺を睨んだ空の顔は…
唇から血が出ていて
初めて見た空の顔に…
切なさより、悲しさより、焦りより
落胆した…。
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