着替えをし、珍しくネクタイなんか締めて
首元が心なしか苦しい気もするけど…
そんな事より、鏡に映る正装した俺の姿が笑える。
みんなで車に乗り込んで、いざ出発!って空気に…
"嫌や"って、心が駄々をこねる…
前にオトンとオカン
真ん中に俺と空
後ろに海と雪
隣に座る、空の顔を見ると
さっきまでと違い…強張ってる。
羽織っているスーツを脱ぎ、横に置くフリをして
コッソリと空の手を握ると…
チラッと、こっちを向いた後
握り返して来た。
(あったかい…)
さっき、空は拒まなかった。
それって…俺のこと受け入れてくれてるって事なんだか…?
ちょっとだけ、期待してもいいんやか…?
聞きたい!聞きたい!聞きたい!聞きたい!
意気地なしの俺が、聞ける訳ないねんけど…。
空いている方の手で、そっと自分の唇を触ると
まだ、あったかい気がして…恥ずかしくなった。
俺達を乗せた車は、あっと言う間に目的地に着き
店の入口に立つと、柄にもなく緊張して来て生唾を飲む…
「こんばんは!今日は忙しい中ありがとうございます。」
そう言って、個室のドアから出て来たのは茜の父親。
オカンとオトンが、茜の親に堅苦しい挨拶をしてると
空が口を開いた。
「初めまして。姉の空です。」
茜の親に向かって、お辞儀をする
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