『オカンもヒステリックな所あるもんな〜』
「ここ1年は、優しいお母さん見た記憶ないけど。」
何て声をかけたらいいか分からない…。
悩んでたら、更に言葉を続ける空。
「あたしさー、何だかんだ言ってお母さんのこと好きやから、家にいて怒ってばっかのお母さん見たくないんだよね。」
『まさかさ…ばあちゃんの所に行く理由って、それ?』
"コクン" と、首を縦に振るだけで
何も言わない…。
俯いた空は、また大事そうに右手の薬指にはめてある指輪を触る。
そんな空を見てるだけしか出来なくて
俺の視線に気付いた空が
「これ触ると落ち着くんだよね。何かさー、健也が "頑張れ" って言ってくれてる様な気分になる…」って。
"あぁ…俺じゃ駄目なんだ…"
そう思った。
「ズズッ……」
鼻をすする音が聞こえて
顔を覗き込むと…泣いてる…
空の太ももに大粒の涙がポタポタと落ちて行き
それを見て、俺まで目頭が熱くなった。
.

