「やっぱり思い出せないや…ごめんね。」
私は手に持った手紙をまた元のように小さくおりたたんで、そっと川瀬君の手に戻した。
こうするのが一番いいと思ったから。
私はたった今まで思い出せなかったのだ。
そうだ、しょうがない。
笑顔で、思い出したよって言ったら、
もしかしたら、川瀬君の笑顔が見れるかもしれない。
彼女になれるかもしれない。
けど、
それは、
他にも川瀬君を好きな女のこ達に対して失礼じゃない?
私は、川瀬君のことをずっと覚えてたわけでもないのに、
ずるいハンデをもらったみたいで。
そんなので付き合えても私も釈然としないし。
だから、
私は…
正々堂々と勝負に出る!
「そっか、…残念!」そう言って苦笑いを浮かべる彼をそっと見上げた。
「えっ!?どうした?!
なんで泣いてるっ…」
動揺して焦ってる彼に
にっこり笑顔を作った。
今の私の精一杯のキメ顔。
ほんとは、
最高の笑顔でいたかったんだけど・・・
今は止めようと思っても自然と出てきちゃうから。
「私ね、
…川瀬君が好きみたい。」

