「…川瀬くん…?」
彼の視線に耐え切れなくなった。
いつの間にか、思い出されようとしていた記憶は深く私の中に潜り込んで再び眠りにつこうとしている。
このままずっと見つめられていたら、思い出すような気がする。
けれど本能でそれを回避するように、彼の意識を反らそうとした。
「あの…手・・・」
「えっあっ、えっ!?」
彼自身、驚いたのか素っ頓狂な声を上げた。
ぱっと私から手を離すと、所在なげに両手を上げる。
「そんなにしなくても、その…手を掴まれたのが嫌だった訳じゃないよ。」
今にもものすごい勢いで謝ってきそうな彼に先手を打ったつもりだ。
「あ…、そっか」
「うん。」
そのまま黙りこんでしまった。

