彼の彼女になれたらなんてそんな高望みしてるわけじゃないのに…
私と彼の距離は他人から顔見知りに近付いた程度。
あの、"ゆうご君手紙事件"から早1週間。彼とは言葉を交わしてない。
廊下ですれ違うとき、目があっても恥ずかしくってつい目をそらしちゃうんだ。
そういえば、あのゆうご君手紙事件は、どうやら彼に直接相手が誰なのか聞いたみたいだけど、あっさりはぐらかされて、迷宮入り。
女の子達の間では暗黙の了解でこれ以上は追求しないことになったみたいだ。
「ゆっこ、そういえばさっき数学の佐々木ちゃんにノート取りに行くように言われてたよね?」
ホームルームも終わり、散り散りになる教室でコズエが帰る支度をしながら私に言ってきた。
・・・って!!!
「あぁっ!!すっかり忘れてたぁー…」
「もー早く行ってきなぁ。私教室で待ってるからー」
コズエが落ち込む私の背中をポンポンと押してくれる。
「うん…行ってくるよ。」
重い足取りながら、日直である私は責務を果たすため、数学科研究室へと走っていった。

