夕日に照らされた教室には二つの影が延びる。
仲よさ気に重なる二つの影は、
一瞬重なって
そっと離れた。
「…ほんとに、私でいいの?」
「まだ、聞くか!
俺はゆうが好きなんだよ。」
「けどっ!私のこと全然知らないでしょ!」
「ッ知らなくねぇよ!だって俺、入学当初からずっとゆうを見てた…から。」
二人の視線がそっと重なった。
けど、力強い瞳に負けて先にふいっと目を反らしたのは真っ赤なゆでだこ。
「…そんなに赤くなられると、こっちまで移るだろ。」
「そんなこと言われたって・・・恥ずかしいよ。
それで…
今のってホントなの?」
「ウソじゃねぇ。
ずっと見てた。だから知ってる、ゆうのこと。
小さな頃の気持ちなんかに負けないくらい、
ゆうが好きだ。」
「私もだよ。」
教室は幸せな笑い声で満たされる。
教室の窓からは、
始まりの季節からの出発を意味するかのように、
桜の花びらが遠くの空へと旅立つ姿が見えた。
*完

