ふたつの指輪

「あの、しゃ、シャワーを……」

あたしの口から、うわずった変な声が飛び出した。



お客さんは、そんなあたしをちらっと見て、憂鬱そうに口の端だけでフッと笑った。



「緊張すんなよ。


別に何もしなくていいから」



「……え?」



「ここには上司に強引に連れてこられただけだ。

俺は商売女に裸にされて口でされるなんてまっぴらゴメンだからな」




――何もしなくていいの?


そんなのって、アリ?




(ほ……)



いきなり、かなり珍しいであろうお客さんにあたって、あたしは胸をなでおろした。


死刑執行が延期になったような気分。