ふたつの指輪


「はいッ」

「レナちゃん、お客さんです」

「……はい」


ついにこの瞬間がやってきてしまった。

あたしが相手をするお客さん。



こんなところに来るのは、どんな人なの……?


こぎたない禿げオヤジ?

酒くさいジジイ?

キモい男?




ノックの音がして、カチャリとドアが開いた。

店員が客を招き入れる。


あたしは唇を噛んで、思わずうつむいた。



「ごゆっくりどうぞ」

店員は無情にもあっさりドアを閉めていく。




「……レナとか言ったな」


低いよく通る声がして、あたしはやっと、あたしの初めてのお客さんの顔を見上げた。