ふたつの指輪

「……おい、泣くなよ」


あわてたように、あたしをぎゅっと抱きしめる。


「な、聞いてもつまんねぇだろ」


おどけたように言う。


「……だまして楽しくなかったのって、瞳衣だけだったよ」

「魁人くん……」



誰も信じられなくて。

親にさえ信じてもらえなくて。

自分を受けとめてくれる世界を失って。



自暴自棄になって、夜の街にずぶずぶと落ちていく15歳の魁人くんが見えるような気がした。



怪物の棲む安心できない家で。

信頼できない世界で怯えながら育つ、傷ついた小さな少年。




魁人くんの繊細な横顔に。

あたしは勇気を出して聞いた。