ふたつの指輪

下手くそでも一生懸命編んだセーターを笑われたことがあった。

「今はそんなのは買ったほうが安いから、そんなことしてても食べていけないわよ」

なんて言われて。

確かに、それは正しいのかもしれないけど。

あたしが何が好きか、何をやりたいかを大事にしてくれなかった。

そんなことを言われると、あたし自体を否定されているような気がしてたっけ。



ママはあたしのことをひどく言って、わざと傷つけるようなことをよくしてた。

機嫌がいいときと悪いときで言うこともまったく違ったし。

理不尽なことでよく怒られてた。


あたしはママがいないと生きていけなかったから、ママを唯一裏切らない存在だったんだね。


だから、ママのストレスのはけ口になってたんだ。



「ママは立派な人」

「ママは完璧な人」「正しい人」

幼い心に抱いていた、ママのイメージが木っ端微塵に砕け散っていく。