ふたつの指輪

――やけに絡んでくるな、この人。


あたしは思わず、ぎゅっとこぶしを握りしめた。



「今もまさかあんたがこんなところでバイトしてるなんてな、思ってもねぇだろうな。

ただ、いつまでもバレないと思うなよ……」



「……彼は事情でしばらく連絡取れないの」


あたしは言い訳がましく言った。




きりりとした形のよい眉の片方がすぅっと上がる。


「事情って?」

「ペンションの長期バイトなの」

「ペンションって、山に泊まり込むやつか?」

「……」


こくりとうなずく。


「長いこと行ってんのか?」

「1ヶ月ちょっとくらい」

「……そりゃ長ぇな」


興味なさげにつぶやく。