この花を 届けたくて

車を走らせています

わたしの心と一緒に

フロントガラスを 濡らす雨

夜の街は わたしにやさしい



胸の高鳴りを 悟られぬように

静かに この花を生ける
純白の やさしさ溢れる花

かすみ草

どこか あなたに似ている



かすみ草は 知っている
ささやかだけど 幸せだったあの頃を

わたしは 信じている

戻らぬ 日々に

育んだ 愛に

悔いは 無いのだから



「今日は 何かあるの?」

幸薄い青年が、聞く

ずっと 独りだったあなた

いつも 寂しかったあなた

「お誕生日 おめでとう」

満面の笑みで答えるわたし



照れ屋の あなた

「ありがとう」小さく 呟いた

細く白い背中が、泣いていた

そんなあなたが、愛しくて

あなたの涙に 涙したわたし



幸せになろうね

小さな部屋の片隅で

かすみ草が、にっこり微笑んだ