「分かった」 一言だけ呟いて 俺は寝室を跡にした…。 これ以上、一緒にいたら 離れられなくなる… お互い…痛いくらいお互いの気持ちが伝わってきた… 部屋を出る時も 車に乗る時も 精一杯、明るく笑う藤井の体を、何度抱き寄せ 引き止めたいと思ったが… 「先生…」 「どうした?」 聞かなくて、分かるよ… 「あたし、帰るね。ありがとう、先生。」 沙織が先生と言うとき 沙織は、俺の目を見ない 先生という事で 別れの寂しさを 紛らわすように 何度も「先生」と呼ぶ沙織の手をギュッと握った…