図書館で会いましょう

それからの二人は幸せな日々を過ごした。やがて大学を卒業し、由美はそのまま研究室に残り、誠司は中学校の教師となった。会う時間は少なくなったがお互いの感情に変化はなかった。
卒業から三年が過ぎた。由美は真理子と久しぶりに食事をしていた。
「ホント、久しぶりだね。」
「お互い忙しいもんね。」
真理子は雑誌の編集者として取材に飛び回っている日々のため二人が会うのも半年ぶりだった。
「真理子は浩平くんとどうなの?」
「んー?まぁ順調かな?」
「もうだいぶ長いじゃない。結婚は?」
「浩平も忙しいしね。」
浩平は大学を卒業した後、テレビ局のアナウンサーになっていた。
「そっか…」
由美は残念そうにワインを飲む。真理子のほうはそれに合わせてワインを飲みながらニコッと笑った。
「でもね。今やってる新しい雑誌の立ち上げが終わったら…そろそろどうかなって言われたんだ。」
真理子の笑顔は恥ずかしそうだった。
「えー!本当?良かったじゃない!」
由美は店に響くように大声を出す。ウェイターや他の客が皆こちらを見る。真理子はいち早くそれに気付いて由美に「しーっ」と唇に人差し指を立てた。由美は真理子のしぐさにはっと気付き肩を恥ずかしそうにすぼめた。
「ごめん、ごめん。」
「由美ったら…」
真理子は自分を落ち着かせるためにワインを一口飲んだ。
「でも浩平くんとなら幸せになれるよ、真理子。」
由美は親友の真理子の幸せが自分のように思えた。
「ありがとう。由美にそう言ってもらえると嬉しいよ。」
真理子もそんな由美の気持ちが心の底から嬉しく思えた。
「ところでさ。」
真理子が声をかける。由美はちょうど目の前のパスタを口に運ぼうとしていた時だった。真理子の声に驚いた由美は目をパッチリと開けている。それがあまりにも間抜けな表情で真理子は思わず吹き出しそうになってしまった。
「もーう、何?」
由美は恥ずかしさで顔を赤くしてふてくされる。
「ごめんね。」
真理子は少しの間笑いが止まらなかった。その間、由美はふてくされながら黙っていた。