「どうぞ。」
由美が違和感を抱いた時、後ろからの北澤の声ではっと我にかえる。
「あ…これ。」
由美はさっき買ったケーキを北澤に渡した。
「すいません。気を使わせて。」
「いえ。」
北澤はまた台所に戻った。皿を出そうとしているのかガチャガチャと陶器がぶつかる音がする。
「凄いですねぇ。」
由美はいつもより少し大きい声で言う。もちろん、北澤に聞こえるようにするためだった。
「何がですか?」
台所のほうから北澤の返事が聞こえた。返事の後に北澤は小皿とフォークを持って戻ってきた。
「いや…この写真の量が。」
由美はいつものトーンに戻る。
「あぁ、これですか。まぁこれが商売ですからね。」
北澤は少し落ち着いたのか、取材の時のような口調になっていた。由美にとってもそれはありがたかった。
「山本から聞いたんですけど。」
由美が唐突に話しかける。
「はい?」
「以前は都内でやってたんですよね?」
由美の問いに北澤は少し表情を曇らした。
「すいません。変なこと、聞いちゃいました?」
北澤はケーキの箱を開け、視線で由美に選択を迫った。由美はレアチーズを指差す。ケーキを小皿に運びながら北澤は口を開いた。
「色々あったんですよ。」
その言葉は静かな室内でなければ聞き逃してしまうぐらいの呟きだった。由美はそれを黙って聞いていた。
「そん時にあの本の写真家の写真と出会ったんですよ。その時は既にその方は亡くなってて。やっと写真集を見つけれたんです。」
「そうなんですか…」
由美は出された紅茶を飲む。
「一回もその人とは会えなかったんですか?」
由美の問いに北澤は黙って頷いた。北澤もまた紅茶を口へ運ぶ。カップをテーブルの上に置き、
「名前は聞いたことはあったんですけどね…その頃は分野も違ったし。」
その表情は無念さに近いものを含んでいた。
「すいません。変なこと、聞いて。」
由美は北澤の表情を見て、何だか申し訳ない気持ちになっていた。
由美が違和感を抱いた時、後ろからの北澤の声ではっと我にかえる。
「あ…これ。」
由美はさっき買ったケーキを北澤に渡した。
「すいません。気を使わせて。」
「いえ。」
北澤はまた台所に戻った。皿を出そうとしているのかガチャガチャと陶器がぶつかる音がする。
「凄いですねぇ。」
由美はいつもより少し大きい声で言う。もちろん、北澤に聞こえるようにするためだった。
「何がですか?」
台所のほうから北澤の返事が聞こえた。返事の後に北澤は小皿とフォークを持って戻ってきた。
「いや…この写真の量が。」
由美はいつものトーンに戻る。
「あぁ、これですか。まぁこれが商売ですからね。」
北澤は少し落ち着いたのか、取材の時のような口調になっていた。由美にとってもそれはありがたかった。
「山本から聞いたんですけど。」
由美が唐突に話しかける。
「はい?」
「以前は都内でやってたんですよね?」
由美の問いに北澤は少し表情を曇らした。
「すいません。変なこと、聞いちゃいました?」
北澤はケーキの箱を開け、視線で由美に選択を迫った。由美はレアチーズを指差す。ケーキを小皿に運びながら北澤は口を開いた。
「色々あったんですよ。」
その言葉は静かな室内でなければ聞き逃してしまうぐらいの呟きだった。由美はそれを黙って聞いていた。
「そん時にあの本の写真家の写真と出会ったんですよ。その時は既にその方は亡くなってて。やっと写真集を見つけれたんです。」
「そうなんですか…」
由美は出された紅茶を飲む。
「一回もその人とは会えなかったんですか?」
由美の問いに北澤は黙って頷いた。北澤もまた紅茶を口へ運ぶ。カップをテーブルの上に置き、
「名前は聞いたことはあったんですけどね…その頃は分野も違ったし。」
その表情は無念さに近いものを含んでいた。
「すいません。変なこと、聞いて。」
由美は北澤の表情を見て、何だか申し訳ない気持ちになっていた。
