図書館で会いましょう

『ん?』
由美は館内へ歩きだす館長と真理子の他にカメラマンの男性の顔を見た。
『あの人…どっかで会ったかなぁ…?』
どこかで見たことがある顔だった。しかしそれが誰でいつ会ったのか分からない。
『気のせいかな…』
由美はたいして気にせず応接室での取材の準備をすることにした。

しばらくして応接室に館長と真理子、そしてカメラマンが入ってきた。
「お疲れ様です。」
館長はそう言ってソファに座るよう促す。
「館長、ありがとうございました。」
真理子がそう言うのと同時に由美はテーブルの上にコーヒーを置いた。真理子はまるで他人のように会釈をする。その仕草を見ると真理子がまるでまったく知らない他人のように見えた。
「後はインタビューもさせていただきたいのですが?」
「インタビューですか?」
インタビューという単語に館長も驚く。由美も同じだった。
「ええ。全国的にもこのような文化的施設は珍しいので色々と記事にしたいんです。ご協力いただきたいのですが?」
「そうですか…ちょっと恥ずかしいですが…分かりました。」
そう言ってインタビューが始まる。由美は黙って部屋の隅にある椅子に座りその様子を見ていた。館長はここに来るまでは大学の教授をしていた。たぶん今までの人生の中で学会やら専門誌などで色々と話をしてきたのだろう、恥ずかしいと言いながらもその受け答えは慣れたものだった。館長と真理子がインタビューで話し、その様子をカメラマンが撮る。まるで映画かテレビドラマでも見ているような気分だった。
「遠山さん。」
館長の言葉に我にかえる。「は、はい。」
「こちらへ。」
館長の横に座った。
「こちらが我が図書館自慢の司書、遠山由美さんです。」
「えっ!」
館長の言葉に驚きを隠せなかった。今までの話の流れがわからない由美にとってまったくつかめないことだった。
「いや、山本さんからこの図書館の自慢はと聞かれたのでね。」
真理子を見るとにっこりと笑っている。館長は続けて由美がここに来るまでのいきさつなどを話し始めた。あまりにも良く言うので由美は顔が赤くなってしまった。
「まるで自分の娘を自慢しているみたいですね。」
館長の様子に真理子が感想を言う。その言葉に館長はにっこりと笑った。