図書館で会いましょう

「えーそうなの…」
真理子は残念そうに言う。
「でも何か意味深じゃない？その言い方。」
真理子は一旦グラスを手に取ってからそう言った。由美はパスタを飲み込み、
「そうかな…」
とため息をつきながら言う。真理子はグラスから手を離し、
「そうだよ。多分、誠司くんは下調べしてたんだよ。」
と言う。その目は輝いていた。
「そうかな…」
「そうだよ。期待していいんじゃない？」
「まぁ誠司のことだから…あまり期待して外れるとがっかりするしさ。」
由美の言葉に思わず真理子は笑ってしまった。

それから一週間が過ぎた。由美は誠司の家で夕飯を作りその片付けをしていた。誠司はテレビを見ながらビールを飲んでいる。
「なぁ由美。」
洗い物をしている後ろから誠司が声をかけてくる。
「何？」
最後の皿を洗い終え、それを水切りのカゴに入れる。濡れた手を拭きながら誠司のほうを振り向いた。
「来週、俺の誕生日じゃん。」
「んーそうだね。」
その日は平日だが休みを取って誠司の誕生日パーティーをするつもりでいた。由美は誠司もそのつもりだろうと思っていた。
「その日さ、前に由美が行きたいって言ってたレストランに行かないか？」
誠司がそう言うのに驚く。何しろ自分のことにはあまりにも無頓着だからだ。
「どうしたの？急に。」
由美はあまりの驚きに声が大きくなってしまった。その大きさに逆に誠司が驚く。
「そんなに驚くなよ…」
誠司の反応を見て少し落ち着かせた。由美は誠司の横にスッと座る。
「まぁ、最近俺も部活の顧問やら試験やらであまり出掛けてないだろ？」
誠司の言葉に由美は2、3回頷いた。
「誕生日って口実でさ、たまにはぱーっとやろうかなって。」
思わず由美はクスッと笑ってしまった。
「何笑うんだよ。」
誠司は由美の反応に不満そうだった。
「だって…普通そういうのってお祝いするほうが考えない？」
「うっ…」