どうして、と言うように、マレッタ様は目を見開いていた。
フィリア様が「ネオくんたら、ロゼくんに任せたのね?」と言うのを耳にしながらも、私はマレッタ様の前まで歩く。
「…ロゼリナータ…様」
か細い声で、マレッタ様が私の名を呼んだ。
「マレッタ様」
対して、私ははっきりとした口調で彼女の名を呼ぶ。
マレッタ様、私は―――…
「貴女に結婚して欲しくありません」
それが、素直な気持ちだった。
途端に、勢いよく椅子が倒れる音がした。
「いきなり現れて…何を言い出すんだ貴様は!」
見ると、真っ赤な顔で私を睨み付ける男性の姿があった。
「言っておくがな、俺がマレッタの―――」
彼の言葉が途中で途切れたのは、マレッタ様が突然立ち上がり、私の腕を掴んだから。
私が驚く暇もないまま、マレッタ様は私の手を引き、駆け出した。
フィリア様の驚いた声が、背後から聞こえた。


