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自室にいた私は、バタバタと近づいて来る足音に、顔を上げた。
「―――ロゼッ!!」
扉が壊れてしまうのではないかという勢いで、メイ様が部屋へ飛び込んできた。
よほど全力疾走で来たのか、髪は乱れ、汗が額を伝っていた。
乱れた呼吸を整えると、メイ様は口を開いた。
「マレッタがっ…、結婚するって」
私は、メイ様から手元の書類へと視線を移す。
「…知っていますけど」
あまりに冷ややかな声音に、自分で驚いた。
メイ様は更に驚いたようで、「えっ」と声を上げた。
「知ってたの?…まさか、昨日の話し合いで?」
私は答えなかった。
それを肯定と捉えたのか、メイ様がため息をついた。
「そっか…知ってたの」
メイ様の気配が、近づいて来る。
けれど、顔を上げる気がしない。
目の前に影が落ちた時、やっと私は顔を上げた。


