振り返る日々

外国語学部はクラス編成されているため
各クラスには担任の先生がいた。
担任と言っても毎日ホームルームをするわけでもなく
週に二度、その先生のクラスを受講するのみで
特に他の先生との違いと言うのは認識できなかった。
私達のクラス担任は鳥谷先生と言うダンディな先生で
NHK教育の英語番組にも出演されていたので
名の知れた先生らしかった。

ある日、鳥谷先生が
「クラスコンパをしよう」と言い、
前期試験が始まる前に、
姫路市の魚町と言う飲み屋街にある「村さ来」で
クラスメート全員でのコンパが開かれた。

順子は欠席だった。
当時順子はマクドナルドでアルバイトをしていて
それがとても面白かったらしく、
授業が終わるとあっという間に教室を飛び出して、
バイト先へとバイクを走らせた。
その日もバイトを優先し、私達のブーイングを浴びながら、飛ぶように帰って行った。

クラスコンパは和やかな雰囲気で進んだ。
私は鳥谷先生の真向かいの席に座ることになり、
何故英語学科を志望したのか
これから何を志すのか
など詰問され
半泣きになっていた。

すると、別のクラスメートのテーブルから一気コールが起こり始めた。
「一気!一気!」
と言う歓声が起こるや否や、
鳥谷先生がすくっと立ち上がって、
「一気はいけません!ハンキにしなさい!」
とそのテーブルに向かって一喝した。
いきなりの怒声とハンキの意味が理解できず、唖然としている私達をよそに、
先生はビールをグラスに半分まで注ぎ、
「一杯の半分だから半気です。さぁ、半気コールをしなさい。」
とそのテーブルまでグラスを持って行き、
「そ〜れ半気!半気!」
と手拍子を始めた。
それに続いて私達も
「半気!半気!」
と手拍子を始めたものの、
なんだか中途半端な間の抜けたような微妙な空気が流れていた。
ただ一人先生がノリノリで
店員が下を向いて肩を震わせているのが
やけに切なく感じた。