兵庫県姫路市の山奥にある
H大学に入学した私は希望に満ちていた。

私の中学生活、高校生活は
あまりにもさえなかったのだ。
中学時代は、内面さえ磨く事ができれば、外見は自ずと磨かれる、と仙人のような悟りを開いたつもりになっていた。
結果、本や映画や音楽にはやけに詳しいのに
母にカットしてもらった、ヘルメットみたいな髪型に瓶底眼鏡をかけた、「女の子」と言うより「メス」と言いたくなるような、出で立ちで、それでも変にこましゃくれた
なんとも薄気味悪い生き物が出来上がってしまった。
高校時代は
「クラスで人気の明るい活発な女の子」を目指そうと
誰彼かまわずフレンドリーに話かけていると
「空気読まずにうるさいウザイ女」と言うキャラで定着してしまった。

中学、高校と自分のキャラ付けを間違えまくった私は、大学生活に虚しい最後の望みをかけていた。

大学生活での私のコンセプトは
「オシャレ」である。
西播磨一番のオシャレスポット「フォーラス」と言うファッションビルで
なけなしのお小遣を叩いて、
オシャレなアジアン雑貨の店で、
オシャレなタイ風ロングスカートを買い、オシャレな黒のTシャツにオシャレなGジャンを古着屋で誂え、
足元は少し崩してスニーカー。
ありとあらゆるファッション誌を網羅して組み立てられたベスト オブ オシャレコーディネートの準備万端。
明日、教室へと入った私を見て、これまたクラスのオシャレさんが
「山田さん可愛い〜。その服どこで買ったん?」
と話しかけてくれて
オシャレ談義に花が咲き、
私を含めたオシャレグループが出来上がるはず。

そんな妄想に心ときめかせながら
私は大学生活初日に備え、
いつもより早く眠りについた。