学校が再開された。
見慣れた顔に出会い、抱き合ってお互いの無事を泣いて喜びあった。
しかし、個々の胸に刻まれた傷はとても深く、シリアスな者だった。

私達は誰も、あの時の事は語らなかった。
まだ語るには心の整理がついていなかった。
苦しみはまだ、続いていたから。
過去の出来事として語るには、
日々の生活はあまりに辛く、過酷だった。
被害が軽い地域に住んでいた私でさえ
その恐怖と、あまりにも変貌を遂げた街、大好きな神戸を思うと涙が不意に込み上げてくる事があった。
一人暮らしのゆりっぺも
時々夜中に目が覚めて、恐怖に震えて夜を明かしたそうだ。
リンちゃんとニッシーは
何も語らなかった。
私達も何も聞かなかった。
聞く事が出来なかった。

そして、今も、彼女達は語らない。
私も聞く事はない。

ただ、彼女たちの日常が
あの震災以前と以後では
180度変わったのだろう事は、想像できた。

私達の過ごす相変わらずの日々は
一瞬で崩壊される危機と、常に隣合わせなのだ。