お正月気分がようやく抜けてきた1月17日の早朝だった。
物凄い衝撃で体が宙に浮いたような錯覚を覚えて目が覚めた。
みると部屋全体が激しく揺れている。
私はただなすすべもなく
布団を被って震えていた。
本棚から本が落ちてきた。
階下のキッチンでは食器棚から食器が落ちたのか
何かが割れる音がする。
ゴォーと言う山鳴りのような音が響く。
ようやく揺れがおさまり、
一階へと走りおりた。
母が割れた食器を片付けていた。
余震は中々おさまる気配を見せなかった。
「すごい地震やったなぁ」私は母に話ながら地震速報を見ようとテレビをつけた。

画面に映しだされた風景に
言葉を失った。
母が背後で短い悲鳴をあげた。

真っ黒に崩れ落ちた町並み。
所どころで上がる火の手。
リポーターが
「神戸が…神戸が…」
と言っている、神戸と言う言葉ばかりが耳にこだました。

友達たちに連絡しようと受話器をとった。

通じない。

何度もダイアルしたが
無機質なアナウンスが流れるのみだった。

友達の顔が脳裏をよぎった。
母と声をあげて泣いた。

後にこの大きな爪痕を残した地震は、阪神大震災と名付けられた。

大学はゴールデンウイーク明けまで休学になった。