マルの運転するワゴンRが
どこまでも続くかのような
長い長い真っ直ぐな一本道を進んでいる。
カーナビが、もうすぐ目的地である順子の家へと到着する事をつげる。
制限速度を守っていたマルが
少しスピードを緩める。

私は、マルのスーツ姿なんて初めて見たなぁ〜なんて
ぼんやりした頭で考える。
30歳になったマルだけど
なぜかそのスーツ姿は借り物のようで
私には違和感があって
なんだかまともに正面から見る事が出来なくて、
窓の外の風景に目をやった。
街頭もない真っ暗な道。
回りには田んぼしかない。
対向車もない寂しい道。
車中の私たちも無言。

静かな静かなドライブも
もう少しで終わりを告げる。
私はこめかみに鈍い痛みを覚えて目を閉じる。
無意識の内にため息をついていたらしく
「大丈夫?」
とマルが問い掛ける。

「うん」
短くそう答えて私は再び窓の外に目をやった。