みんながいなくなった後もそこから動けなかった私に、
あそーちゃんが「カスさー、きのうまではちゃんとできてたのに、急にどうしたん?」と声をかけてきた。
心配そうな表情を見せるあそーちゃんに、
「それが…」
私は涙ながらにことの流れを全部話していた。
ESSに入ったのは、実はしゅーた先生を好きになって、少しでも彼の側にいたかったからだということ、
先生がしてくれた特訓のおかげでセリフや歌が上達したこと、
先生との共通点を見つけてひとりで舞い上がっていたこと、
だけど今朝おねーちゃんから先生には彼女がいるって聞いて動揺してしまったこと…。
そういうことを全部話すと、
あそーちゃんは「そうだったんだ…。カスがしゅーた先生を好きだったなんて意外」と言って、ため息をついた。
「彼女のいる人を好きになっちゃったのはツライよね…。ま、あんなオヤジなんかさっさとあきらめて、早く新しい恋を見つければいいよ」
そんなアドバイスをするやいなや、あそーちゃんは「いっけない!私これからクラスの店番なんだ」と言って、バタバタと部室を出て行った。

