「気持ちには答えてあげないの?」


啓は少し考えてから話し出した。



「あいつには幸せになってほしいんだ。
俺では幸せにはできない・・・」


「アーティスト。 だから・・・?
でも想いがあれば大丈夫じゃないの?」


「絢さん、佳奈はね。
両親を幼い時に亡くしてるんだ。
だから、祖父母に育てられたんだ。

祖父母は佳奈を育てるために、
朝から夜遅くまで働いた。
もう年金で暮らしていく年なのに・・・

それはとても感謝してるんだ。
けど、家に帰ってもいつも一人だった。

寂しいなんて言えない、
自分のために一生懸命働いてくれてる
祖父母をいつも笑顔で迎えてた。

俺はね、佳奈に普通の
幸せを手にしてほしいんだ。

夜にはちゃんと旦那さんが帰ってきて。
ちゃんと向き合う時間がある。
家庭の温かみを感じることの出来る
そんな普通の幸せをね。」