その日、僕は神になった

 僕は自分の中に生じた不協和音のようなズレに、一つ溜息を吐いた。それはいつまでも着なれない、粗悪な生地の洋服を着ているかのような気分だった。
 僕は記憶を奪われるだけでなく、その好みまで変えられてしまったのだろうか?そうだとしたら、いや、そうとしか考えられないが、何のためにそこまでする必要があったのだろうか?謎が謎を呼び、時と共に僕は解決の扉ではなく、迷宮のプリンスの扉に近づいていくような錯覚に捕らわれた。いや、すでにその扉を開き、足を踏み入れているのかもしれない。そして右往左往している様子を上から眺め、嘲笑っている存在がいるのではないだろうか…。僕は怒りと共に、自分の立ち位置が分からないという、そこ知れぬ恐怖に襲われた。そして僕は頭の中で呟いていた、レイチェル…、と。
 すぐさま彼女の返事が頭の中に響く。いつもの冷静な口調は、レコードを再生したかのようだ。そしてその声は、いつの間にか僕に穏やかな安息をもたらすようになってきた。その落ち着いた口調が、僕の不安を和らげてくれるせいかもしれないが、それだけではないのかもしれない…。
「ちょっと来てくれないか」
 特段用事があった訳ではない、ただ彼女に傍に来てもらいたいと思ったのだ。ただ傍に居てもらいたいと。