その日、僕は神になった

 楓真、通称ブーマン。彼は学校でみんなからそう呼ばれていた。人間は残酷なあだ名をつける。だがそれは往々として的を得ているから性質が悪い。
 真はあだ名を付けられる程に人気者なのか?いや、その正反対だ。真とまともに口をきく友人は誰一人としていない。彼はいつも後ろ指を指され、「ブーマンが来た!」「ブーマン菌がうつる!」などと苛められているのだ。十七、八歳にまでなって情けない連中だ。こいつらには個人的に〈神の鉄鎚〉を食らわしてやりたい!
 真は自分が何を言われても、何をされても文句の一つも言わない。表情にもださない。ただ能面のような顔をして、嵐が過ぎゆくのを待っているのだ。それは彼が十何年かけて手にした、彼なりの防衛本能なのだろう。下手にヒステリックになれば、それを面白がって更に苛められる。黙っていれば連中は飽き、その場をしのぐことは出来る。