その日、僕は神になった

一見すれば目的は達成されたかのようだが、
死者数の数は目標の半分にも至らなかった。その原因はやはり彼らの医療技術だった。ワクチンの開発によりその勢いは、急激に終息の一途を辿ることとなったのだ。
 では更なる強力なウイルスを散布すればいいのではないか?だがそこにも問題はある。あれから百年の年月を経て、人類の医療技術は当時のそれをはるかに凌ぐものへと進化した。そして当時スペイン風邪が流行した要因として、世界大戦の最中ということもあった。先進国は戦争の最中にあり、栄養価が不十分であったために、免疫力に欠けていた。だからこそ五千万人という死者を生み出せたのだ。だが今日の人間界では世界的な大戦は行われておらず、驚異的なウイルスを蔓延させたとしても、被害拡大を望めるのは発展途上国の貧しい地域のみだ。
 今や人類の人口は六十億人を越そうとしている。その全人類を滅ぼすほどに強力なウイルスの蔓延は、神々の力を持ってしても不可能に近かった。