「いてーって!」



叫んだ俺の声に、ひなたはようやくはっとした顔になってあわててその手を外した。



多分、こいつも条件反射だったんだろうな。



昔からの。



「きぃちゃん。陽斗くんのこと思ってる?」


「・・・・」


なんでわかんだよ。


「陽斗くんはバカなんかじゃない。人を本気で好きになることはバカなことじゃ、決してないよ」


「・・・・・・」


「私も・・・・美馬さんが本気で好きだったよ。いろんなことがあったから泣いたり悲しんだりしたけど、今はね、人を好きになって本当に良かったって思うんだ」


ひなたは再びソファに座って隣の部屋のふすまを見た。


「人を好きになるってさ、答えなんかないし、もちろん代償なんて求められないよ。もしかしたら自己満足だって言われたらそうかもしれない。・・・けど、人を幸せにしてあげたい、その人の笑顔がみたい、って純粋に思えるってすごいことだよ」


人を幸せにしてあげたい。

その人の笑顔が見たい?



「陽斗くん・・・アメリカ行くんでしょう?・・・きっと陽菜ちゃんのためを思って一生懸命考えたんだろうね・・・」



一生懸命考える?



「俺は・・・・・・」


「ん?」


「俺は・・・お前のことが好きだったよ。お前を幸せにしてやりたいって思ったし、本気で守りたいって思った。お前の背中をやっとつかまえられたって思ったのに・・・」


「きぃちゃん・・・」