彼女がいつしかうつむいて、その肩が震えてることは気づいたけど、
俺もどうしようもなくて、ただ、目の前のコーヒーを見つめた。
黒い色が、あの時の絶望感、虚無感をふつふつと俺の中に蘇らせる。
「・・・わかったよ」
「きぃちゃん?」
「恋愛って結局そんなもんなんだよな。本気にならないほうがいいんだ。
去るもの追わず、ってさ」
「きぃちゃん・・・っ!」
不意に、病室の前に座ってる陽斗の姿が思い出された。
「・・・人を本気で好きになる奴が・・・バカなんだよ・・・あいつも・・・・・・」
「喜三郎!!」
バシッ
衝撃の後からじわじわと痛みの感覚が押し寄せてきて、
俺はひなたに平手打ちされたことに気がついた。
「いいかげんに・・・いいかげんにしなさいっ、喜三郎!!」
とっさに見ると、ひなたは涙をためた真っ赤な目で、腰を上げていた。
反射的に目をそらした俺の耳をぐいとつかんでひなたはひっぱりあげた。
いて。
いてーって!!

